老人ホームの日々是晴れ、曇り日記

医師の訪問診療に同行する薬剤師です。老人ホームに入る前の準備や日々の頭の中を綴ってます。

最終で勝ち組になりたい

施設に出入りしていると時々みんなで唄っている姿を見かける。

選曲は民謡もしくは昭和の演歌的なもの、昭和のヒット曲が主流だ。入所者の姿を見ると、懐かしい歌にのせて一緒に唄っている人もいるがあまり楽しくなさそうな雰囲気の人も多いのが気になる。

考えてみれば音楽って個人個人の好みがあるもんね。

刺さってないのか〜この選曲じゃ…。

本来音楽はみんながちょっと楽しい気分になれたり、元気になれたりする癒しのアイテムのはず。でも認知症が進むとこんなに無表情になってしまうものか。

認知症の脳に突き刺さると言えば、ちょっと前に評判だったムロツヨシ戸田恵梨香のあのドラマを思い出す。

 

こんなシーンがあった。

最終話だったかな?海岸でムロツヨシ戸田恵梨香に自分の本を読み聞かせしている時、不意に脳の神経ニューロンが接続し戸田恵梨香がこう言った。

「迷惑かけると思うけど、一生懸命生きるからよろしくお願いします」

この台詞は彼女の病気が進行する前にムロツヨシに言った言葉だった。

この瞬間の脳の中の神経の働きを思うとなんて美しいのだと感動した。

脳って素晴らしい。記憶って凄い。

こんなドラマチックな出来事は私の生活に無くとも、万人に平等な音楽だって強烈な記憶を残してくれるものだと思う。

思い出の音楽には必ずドラマがあるから。

『学校から帰ると母親が台所で口ずさんでいた‘学生時代’

 彼とよく行ったスキー場までの車中でかかってた‘ブリザード

 結婚後15年経ったある日ふと贈られた‘Living  with joy’など』

歳を取って本当に1人ぼっちになって人生の最終局面に差し掛かった時、幾つの思い出の中で日々自己満足の幸せ気分に浸っていられるかが私の勝ち組人生か否かを決めるかもなっ?と思うようになってきた。

その精神勝利法を満たすためにも脳に突き刺さる思い出を一つ一つ育まねば…。