老人ホームの日々是晴れ、曇り日記

医師の訪問診療に同行する薬剤師です。老人ホームに入る前の準備や日々の頭の中を綴ってます。

おひとり様に必要でしょ?

仕事上“超”が付くほどの高級老人ホームから、アパートの様相を呈するグループホームまで関わっている。

あまりの豪華さに興味本位で覗いたホームページ上に並ぶ0の多さに驚愕する。

家1軒〜2軒分の入居金に、年収350万〜400万位の人の手取りがそのまま全額消えていくような月額料。入れるのは日本のごく一部の人間だろう。少々の芸能人でもなかなか手が出ないのでは無かろうか。

エントランスでは優雅なグランドピアノが出迎えの曲を自動で奏で、その先を進むとコンシェルジュが要件を聞いてくれ手筈を整えてくれる。

通行許可が出ると更にその奥には重厚な色調をしたドアを携えた個室が並び、各室の前には個人の表札といったふうの金色プレートに印字された苗字が堂々と構えられている。

その下にはガラス張りのスペースまであるもんだから、ちょうどコレクションケースのような役割をしているようで、バラの花を飾っている人、プラモデルを置いている人、絵を飾っている人など様々であり、顔を見ずともその趣味趣向が垣間見れる。“假屋崎”  (バラの花)  “長嶋” (バットとボールのミニチュア)っといった感じだ。

 

一方ごく一般的なその他老人施設はアットホームだ。テプラで出力されたであろうお名前であったり、職員におそらく絵心がある方がいるのだろう。入居者個人とは全く関連が無い犬の絵、花の絵、金魚の絵などなどが白い紙に苗字とともに手書きで描かれている施設もある。

豪華絢爛だろうがアットホームだろうがこれから入居する私達世代にとって一番充実して欲しいものがどちらにも欠けていると思っている。

Wi-fi

どんな施設に入居しようともおひとり様である事には変わり無い。

お金が有ろうが無かろうが施設に入居する時点で皆おひとり様なのだ。

先日たまたま居合わせた60代と見受けられるご婦人方の会話を耳にした。

白:「あたしガラケー無くなったら本当に困るわよ。わかないもんね、今の携帯」

赤:「本当よね、でもこれ壊れたら今のやつに買い換えないといけないみたいよね」

青:「息子に教えてもらいたいけど、なんだか忙しいのかさ、きちんと教えてくれないのよね。わからな過ぎてあたしと話してると疲れるみたい・・・」

黄:「あたしこの前ドコモショップに行ったのよ。でもね、もうほんとちんぷんかんぷんだもんね。だいたいにしてスクロールって何かがもうわかんないもんね。」

 

…マジか。スクロールがわかんない…。この人達あと10年か20年したら介護が必要になってくるだろうに、もし施設入ったら一体どうやって1日過ごすんだ?

調べてみた。ざっとだがWi-fiを標準装備している施設は現在ほぼ皆無だ。確かに今の70代〜100歳超の入居者には必須では無いのだろう。

今後この辺の整備を是非ともお願いしたいものだ。暇で暇でそれこそボケてしまいそうで怖い。