老人ホームの日々是晴れ、曇り日記

医師の訪問診療に同行する薬剤師です。老人ホームに入る前の準備や日々の頭の中を綴ってます。

間取りと共通項

日本の住宅事情と日本人の体格等からするときっと6畳程度でそれなりの日常生活は可能だと思う。

平均的な間取りは有料老人ホームだと10畳そこそこ、グループホームだと6畳そこそこと言ったところ。高級老人ホームはリビングダイニングに洋間か和室、若しくはその両方と行った所もある。いわゆる2LDK仕様。お祖父ちゃんの所に遊びに来た孫が自分ちより快適で泊まっていきたいと言いだす始末もありそうだ。

最近気がついたことがある。どの方の部屋にも同じような白いケースがあるのだ。不思議なことに皆同じような大きさで、同じような形である。

お部屋のゴージャス度合いに関係なく皆が所有するこの白いケースには一体何が入っているのか?

 

ある往診同行日・・・

そのケースの蓋が少し開いているシチュエーションに出くわした。

見たい!

仕事の最中だと言うのに気もそぞろ。

勝手に蓋を全開させる訳にもいかないので、見える目線まで自分の姿勢を落とすしか無い。何事も上から目線じゃいけないのだ。

一緒に同行している医師や看護師に気づかれないようにしなければならないのでわざとシャーペンを落としてみた。

拾うフリして下アングルから必死になって覗く。

“透明な液体とピンク色がチラリ”

(見えないけど・・・なんかなんか・・・)

自分の今まで見聞きした経験を総動員し、確信を得た。

入れ歯か。

使ったことが無いので想像がつかなかった。考えてみればそうか。洗面所に置いてあるし。

「歯は大切に」という標語があるがあれは本当に本当だ。

食べる事は施設で過ごす一日の中でかなり大切な楽しみの時間だ。

自歯と義歯では味の感じ方にも大きな差があるそうだ。

数本でも良いから自分の歯があるのは良いことだと歯科医に聞いたことがある。

6畳の人も20畳の人もあの白いプラスチックケースには、共通する道具が入っていたのだった。

歯を外して寝る自分の姿を想像するとまるでホラーだ。

入れ歯してないまんま夜中に急変して救急車で運ばれたりなんかしたくない。

まだ生きてるのに痩けた頬はまるで骸骨みたい。

(若い頃は「今日の下着どんなの着てたっけ?」って運ばれながら考えるのかな?だったのに長く生きると入れ歯の方が気になるのか…)

入所時の持ちもの「自分の歯」を書き加えた。