老人ホームの日々是晴れ、曇り日記

医師の訪問診療に同行する薬剤師です。老人ホームに入る前の準備や日々の頭の中を綴ってます。

あなたはどんなリーダーか


全くタイプの違うリーダーがいる施設に出入りしていると、聞こえてくる職員の本音に考えさせられる。

ある日一人の職員が怒られていた。どうやら夜勤の間DVDデッキを持ちこんで映画観てたらしい。怒られるの当然なのだが問題はそこでは無い。なぜ悪いとわかる行為をしたのかだ。

更にそこの施設の職員が一人辞めた。途端にシフトが回らなくなり歪みがかかった人員配置に残った職員たちから不満が噴出してくる。女性職員3人が施設長の居ぬ間に憂さ晴らしの座談会してる。その内容からしてその場にいない施設長の悪口を言っているのがわかった。この施設の中核となる3人だから大変だ。キャリアがある人達だからすぐに辞めるとか辞めないの話にはならないだろうがしっかり手綱引かないとこの施設崩壊してしまう話だ。

 

ここの施設長は厳しい。もちろん職員思いの優しい面もあるのだが、その立場なら当たり前に持ち合わせている程度の優しさなので職員には全く響いてないのだ。

この施設長が他の職員の愚痴を職員に言っている姿を時々目にする。

失敗や粗相をした職員を罵る行為はそれを聞かされた職員に恐怖を植えつけてしまい、自分は同じ失敗をしてはいけないと言う強迫観念に駆られるし、そうなるともう怒られたくないから言われた事しかやらなくなってしまって機能不全に陥るのがオチだと思うのだが。

 

片やの施設長は厳しいながらも持っているものがあった。

この人は入所者の人生を見ている人だった。

それこそ言葉通り「入所者を見る、事故のないように監視する」介護は出来るが、一人一人にもうちょっと深入りし、それを仕事にするのはなかなか出来ない事だ。

「やめてよ〜、すごい事しているみたいに言わないで」っと肩をぶたれそうだが、(すごい事している人ってたいがいこう言う)’高齢者から学ぶ事はまだまだ多い’と彼女は語る。そしてこう言った。

「身寄りのある恵まれた人ばかりじゃ無いのよ。親兄弟もいない生涯独身の人や、家族がいても疎遠になってて、『もう他人』みたいな人も多いのよ。だからね普段から言ってるの。『最後はここでちゃんと看取ってあげるから安心して生活してね。逝く時は手、握ってるからね』って。」と。手を握るのはこの世に未練や思い残しが無いよう、ちゃんと逝けるようにと言う想いかららしい。

介護の現場で必要なリーダー像として理想的だろう。

このおばさん凄いなっと思った。

以前ここの施設の職員に「ここの施設長さん、薬局に入所者情報のFAXくれないので情報無くて困ってるんですけどね〜私」っとイタズラ気味に話しかけた際こんな返事が返ってきた事があった。

「あ、そうなんだ。ごめんなさい。うっかりしてたんだと思う。今私がコピーしてきますね」っと一瞬にして施設長をかばったのだ。

前出の施設は「あ、そうなんだ。わかんないから本人に聞いてみて」の返事。

この違いか………あっという間に人望が透けたなぁ…っと思ってしまった。

 

眼前に起こる問題事は部下の能力の良し悪しではないのだ。

全て自分のせいであるぐらいの覚悟を持ち、自覚せねばならないのだと思った。